読書…小説・その他(54)

　予期せぬ妊娠に、中絶という未知を選んだ夫婦。ところが妻は、誰かに憑依されたかのような様子を見せ始める。果たして彼女は精神病なのか、それとも本当に憑依されているのか……。

　高野和明ならではの「追い詰められ感」などあるんですが、いままでの期待が高すぎた分、ちょっと落ち着いちゃったなーという感じです。面白いんですけどね！いままで読んだ作品がすごすぎた分、ね！

 　下城の太鼓が鳴ると、いそいそと家路を急ぐ、人呼んで「たそがれ清兵衛」。領内を二分する抗争をよそに、病弱な妻とひっそり暮らしてはきたものの、お家の一大事とあっては、秘めた剣が黙っちゃいない。

　人情味あふれる短篇集で、どれも面白い！基本、どの主人公も、「普段は侮られているが、本気を出すと剣の達人」という、痛快な水戸黄門パターンなので、読んでいて本当に気持ちがいいんですよね。優しくて、ほのぼのして、気持ちいい。素晴らしい作品でした！(≧▽≦)

　青春ボクシング小説です！

　勉強は得意だがスポーツがからきしの優紀。幼なじみの鏑矢は逆に、ボクシングは強いが勉強は論外。しかしそんな鏑矢の強さを、優紀は素直に尊敬していた。ところが、とある事件を境に、優紀もボクシングをやってみることになり、――

　まず、ボクシングの実情が丁寧にかかれていて、部外者にもわかりやすい！一見野蛮に見えて、実はさまざまな科学的観点からルールが制定されていたとか、この小説で初めて知りましたよ！

　そしてさすがの百田節。読んでいてまぁ気持ちいいこと！ある段階で、いままでの世界観が急に転換するところがあるんですが、そこも「おおっ…！」と心のなかで唸ってしまいましたよ！爽やかで気持ちいい小説でした！

　川島良彰という、コーヒーハンターの自叙伝。

　この川島さんという人がまあすさまじい人で、好きなコーヒーのためなら世界の裏だろうと内戦中だろうと現地へ飛んでいく。UCC上島珈琲の秘密兵器として、すべてをコーヒーのためにぶつけている、熱い熱い人なんですよ。

　コーヒーへの熱意と、それに基づく行動力がすごい。縁もゆかりもない海外のコーヒー研究所に押しかけて、結果その研究所に入所できたり、と行動が飛び抜けているんですよ。見習いたいなぁ……。

　「仕事とはなにか」という悩みに対する、答えの一つになる書籍かもしれません。読んでいると美味しいコーヒーが飲みたくなりますよ！

　「ギタイ」と呼ばれる謎の生命体に、人類は生存を脅かされている世界。ギタイと戦う初年兵キリヤは、死ぬたびに時間をループしていることに気付く。何度も殺される戦場で出会った「リタ」という女性とともに、ループを脱出する方法を探っていく――。

　時間がループする話はけっこうあるんですが、その中でもかなり好きですねー。ループを壊すためにはどうすればいいのか、そしてループの原因は何なのか、といった部分がしっかり書かれていて、良いんですよ！そして最後のあの感じ……！良かったです！どっぷり読んでしまいました！

　3シリーズまとめてご紹介！

　トッカンとは、特別国税徴収官のこと。あの手この手お金を隠し、税金から逃れようとする数多の事業者。どこに隠しているのか、どうやって隠しているのか。その証拠を集め、徴収する。

――ところが本作の主人公は、「ぐー子」と呼ばれる新米職員。しかも、ペアになるのは鬼上司と名高い鏡特管。

　海千山千の猛者を相手にし、時として、相手から鬼・悪魔呼ばわりされ、自分はなぜこの仕事をやっているのか、など悩みもがきながらも成長していくぐー子が可愛いんですよ！

　「警察よりも権力が強い」といった、税務署という馴染みのない世界を見ることができますし、テイストも軽くて面白かったです！読んだあとは、税金はちゃんと収めようという気になりますよ……。

　面白かった！これは面白かったですぞ！

　フリードリッヒ二世という、当時にしては進みすぎている思想の持ち主が皇帝に即位する。対する法王は、旧時代の権化のような考え方。この対比が鮮明で面白いんですよ。

　たとえば、フリードリッヒ二世は、聖都エルサレムを交渉によって無血解放するという、当時にしてはありえない偉業を達成します。ところがそれが原因で、法王から破門されてしまうという。「エルサレムにキリスト教徒と異教徒が同居している」という状態が理解されないわけですよ。

　他にも、当時としては異例な法治国家を目指したり、愛人を多数作りながらも嫡子関係でいっさい揉めなかったり、ほんと漫画みたいな人生だな！って人の伝記です。読みやすくてオススメですー！秋の夜長にじっくりと、ぜひ！(≧▽≦)