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火星の人類学者

 タイトルからはSFを想像しますが、中身は脳科学のお話。脳神経科医である筆者が、7人の患者を通じ、人間の「認識」とは何かを語りかけてきます。

 一人目は色覚異常に教われた画家。著名な芸術家であったI氏は、事故により色彩を認識する力を奪われ、白黒の世界に生きることを余儀なくされる。妻はネズミ色となりセックスが出来なくなり、あらゆる食物は不気味な灰色となって食事もできない。

 なにより色は記憶の中にしかないため、画家として生きていくことが出来なくなる。虹は空に浮かぶ色の無い孤となり、視覚的連想が絶たれたため音楽すら空疎となった。

 絶望のどん底にいたI氏だが、巨大な核爆発のような朝日に触発され、再び制作活動に戻ることになる――。

 興味深いことに、色彩感覚が戻る可能性が出てきたにもかかわらず、I氏はそれを拒絶し、白黒の世界で生きることを望むようになります。

 他にも1960年から前へ進めなくなった男、トゥレット症候群の外科医、記憶の中にある思い出の故郷のみを書き続ける男、などなど。正常とは何か、自分の認識している世界とは何か、を再考させてくれる良書でした!

光の帝国

 普通の人間にはない、特殊な能力を有する常野一族。彼らとその不思議な力を軸とし、10つの短編が掲載されています。

 派手なサイキック合戦などはなく、どの話も柔らかい優しさに満ちています。半面、異端の人々に対する冷たさを避けるため、息を潜めて生きていく彼らの苦悩、みたいなものも表現されていて、面白いですねー。いい本でした!

リバーズ・エンド

 私が読んだのは上下巻の日本語訳版でしたが、Amazonでは当該商品が見当たらなかったので、英語版のページにリンクしています。

 で、リバーズ・エンド。母親を殺された少女リヴィと、その事件を担当した刑事の息子ノアが、20年の時を経て事件に迫ろうとします。過去を忘れようとしている少女と家族の戸惑いを知りつつも、ノアは当時の真相を本に記すため駆け回ります。そして意外な真実が――。

 ……まあぶっちゃけて言うと、顔よし・性格よし・収入よしの青年が、スーパーツンデレな美少女を上下巻にわたり篭絡する話。っていうかさーщ(゚Д゚щ)!いくらなんでもノアがカッコよすぎるんですけどーщ(゚Д゚щ)!いい話なのにそこだけには感情移入できないっていうかさー!!

エンド・ゲーム

 「光の帝国」の一短編であった「オセロ・ゲーム」。その物語を膨らませ、一冊の小説となったのがエンド・ゲームです。

 人を『裏返す』能力をもった拝島親子。異能の集団・常野一族から離れ、いつ終わるともしれない戦いに身をゆだねる日々だったが、ある日、父親が『裏返され』てしまい……。

 ほんと恩田陸って人は、世界を造るのが上手いなーと感心することしきりですよ!オセロとはよく言ったものです。ラストはスッキリしませんでしたけどね!Q&A的なモヤモヤ感がね!これハッピーエンドなのかしら……?

太陽の塔

 この文体は物凄く好きです!(≧▽≦)すごいすごい!

 先に言っておきますが、ストーリーは無いに等しいです(えええ)。本作が「日本ファンタジーノベル大賞 大賞受賞作品」なのですが、

 「ファンタジー???」

 と一瞬戸惑ってしまいます。確かに妄想ファンタジーですが。

 しかし、それなのに物凄く面白い!女性に縁のない理系男性が、カップルやらクリスマスやらを嫌い、恨み、嫉み、クリスマスイブに繁華街のど真ん中で決起集会ってどこかで聞いたことのある話だなぁオイ!

 

 「本当にクリスマスイヴの予定はあいているのか?」

 「何をいまさら」

 「もし、何か予定があるなら、俺はいいぞ。俺一人でもやるからな」

 「私を見損なうな」

 

 こういうノリが好きな人には超オススメです!