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いよいよ今回の旅の難所に挑戦です。
千葉工業団地エリア。
このエリアを越えてこそ、100km踏破の道が開けるのです――。
最初は線路の内陸側を北上していたのですが、道沿いに人家はおろか街灯すらない。写真では明るく映ってますが、実際はものすごく暗いのです。
ここも歩道と車道の境があいまいで、車とすれ違うたびに恐怖を感じます。踏切があったので線路を渡り、東京湾側の道路へ移動。いよいよ工業団地を歩きます!
真っ暗。
想像以上に真っ暗。
上の写真は、左側に道路、右側に野原、中央に歩道が映っているのです。実際より明るく見えるはずのカメラですら、この暗さですよ。現実に歩いてる私からしたら、暗闇もいいところです。
左手遠方に工場が並び、夜間にもかかわらず規則正しい金属音が響いてきます。工場と歩道の間にバイパスがあり、ヘッドライトを灯した車が猛スピードで駆け抜けます。右手には緑地帯が広がり、うっそうと茂った森が壁のように立ちはだかっていて。
なんだこれ
人の気配がまったくない
もちろん工場には人が勤務してるでしょうし、車には人は乗っています。だけど、人間が居る、というリアリティが感じられない。まるで壁の向こう側にある別世界のように思えます。街灯も信号もないので、車が通らないと、何も見えないぐらいの暗闇。もちろん人家もコンビニも一切ありません。ある程度予想はしていたものの、ここまで酷いとは……。
っていうか、俺、こんな場所を20km以上歩くのか……?
急に寒さが増した気がして、思わず身体をすくめます。これは冗談抜きでマズイ環境だぞ……。自販機もコンビニもない状態で、どうやって水分を補給するんだ?そもそも、明かりも何もないのに、どこで休憩するんだ?真っ暗な原っぱで寝転がるのか?いや、もしここでハンガーノックに陥ったら……。
動けずに暗闇でうずくまる自分を想像し、慌ててチョコを口の中に押し込めます。もうチョコの味なんてしません。
寒い。
寒い。
寒い。
寒い。
ここで変な連中に絡まれたら、逃げることも助けを求めることもできない。万歩計には防犯ブザーが付いているけど、ここで鳴らしても誰一人聞こえない。タクシーを呼ぶにも現在地が分からない。そもそも携帯がつながるかどうかすら怪しい。もしここで車に轢かれても、2〜3日は誰にも気付かれずに放置されそう……。
あまりの絶望感に、いっそ、右手の原っぱで一夜を明かすか……などと考えます。しかし、寒さと恐怖に耐えながら朝まで寝ていたとしても、周りが明るくなるだけで事態は一向に改善しないのです。
GPSを見ると、次のチェックポイントまで「あと21.5km」の文字が。必死に歩いて、歩いて、歩いて、歩いて、再びGPSを見ると
「あと21.4km」
100mしか歩いてない。次のポイントまで、これを214回繰り返すのか……?しかも、チェックポイントに到達したとして、そこから自宅まで、さらに40kmも残っている……。
前を見ても暗闇。後ろを振り返っても暗闇。
リタイアはできない。休憩もできない。
いまの自分には、前へと歩くことしかできない。
前へ。
前へ。
前へ。
街灯がないと、休憩する場所がない。真っ暗な道で座り込んだら、なんかちょっと精神的におかしくなりそう。ひたすら歩くしかない。GPSを見る。まだ100mも歩いてない。
寒い。
寒い。
寒い。
寒い。
本当に挫けそうになった頃、ライトで照らされたガソリンスタンドの看板が見えてきました。やった……あそこまで歩けば、トイレもあるし、自動販売機だってあるだろう……。何よりも、誰か人間と会えるだろう……。
光源まで距離があるのに、周囲が暗いと近くに浮き出してるような錯覚に囚われます。すぐそこにありそうなガソリンスタンドの看板が、歩いても歩いても近づいてこない。それでも一歩一歩進んでいくと、
ぱっ <消灯
宇佐美が
消えたー!!!Σ( ̄□ ̄;
すさまじい喪失感。ものすごい絶望感。真っ暗なガソリンスタンドに近づくと、「営業時間:〜午後9時半」の文字が。あああああ……せっかく人間に出会えると思ったのに……。もう人の気配がなくても、「住友化学」や「TOYOTA」の看板があるだけで嬉し
ふっ <消灯
TOYOTAも消えたー!!Σ( ̄□ ̄;
あの時の感情は一生忘れない。全世界から見捨てられた気持ちになる。「あ、俺って要らない子だったんだ……」思わず膝を屈しそうになるも、ここで座ったら二度と起き上がれない気がして、歯を食いしばって前方へ。「住友化学」の看板は消えなかったよ……。危なく住友化学に惚れそうになったよ……。
「住友化学」の看板の下、無人の駐車場で休憩。コンクリートの冷気がお尻をどんどん冷やしていきます。
地図を確認。工業団地のページの、1/4も進んでいません。絶望的な気持ちで前を見ます。日中ならば地平線すら見えそうなほどの、まっすぐで平坦な道のはるか先に、なにやら青い光が。
……ん?
なんだアレは?
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