ball03wls.gif (1536 バイト)「俺のピクニック」100km歩行記(10)ball03wls.gif (1536 バイト)

トップページ 戯言 > 俺のピクニック(10)





17.希望の光

 住友化学の駐車場から立ち上がり、永遠に続くかと思われる暗闇の中、再び歩き始めます。それにしても気になるのは、先ほどから前方に見える青い光、ですよ。

 普通に考えれば、交通標識が照らされているだけのような気がします。しかし、私の中ではもうひとつの可能性を拭いきれません。人と邂逅できる希望の光。

 

 あれ、ローソンの看板じゃないか……?

 

 青地に白い牛乳瓶の、ローソンの看板に見えなくもない。いやしかし、交通標識だって青地に白文字ですよ。この場所からはあまりにも遠すぎて、どちらか判断できません。すぐにでも確かめたいのですが、もし走って近づいたのに交通標識だったら、もはや立ち直れないほどのダメージを受けてしまう……。いやすでに、これだけ期待してローソンじゃなかったときのショックはツライ……。期待しちゃだめだ、だけど……どっちだ……どっちなんだ……

 前へ進むごとに、少しずつ輪郭がはっきりとしてきます。まだ分からない……標識か……コンビニか……どっちだ……どっ

 

 

 ローソンだあああああああああ!
 



 



 うああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!(T■T)

 

 なんという美しさ!なんという暖かさ!まちのホットステーションこそローソンが、挑戦者に微笑みかけるがごとく、その場所にぽつんと建立してたのです!

 

 

 なんという力強い矢印!

 

 さあ右へ曲がれと!

 

 俺はここに居るぞと!

 

  ローソンの看板が私にそう語りかけてくるわけですよ!!

 

 いっときますけどね、私、ローソンを見て泣いたからね。ごめんよローソン……12時間ほど前に酷い事を言ったのに、君はそんなボクを見捨てなかったんだね……。さすがリラックマフェアをやるだけの事はあるぜ……。

 ありえない方角から歩いてきたジャージ姿の私に対して「いらっしゃいませー」と温かな声をかけてくれた店員(中年)に頬擦りと接吻をしたくなる気持ちをぐっとこらえ、まずはトイレですよ。

 

 鏡を見て絶句。自分、信じられないぐらい老けてた。

 

 正直、かなり引いた。たった1時間なのに、絶望というストレスはこれほどまで人間に影響するのかと。あ、あとね、トレッキング用のタイツを履いてるじゃないですか。タイツ、相当ぴっちぴちなんですよ。それがチ○コをぴったり押さえつけててね。

 寒さのせいで、チ○コが冷凍パックみたいな有様に

 しかし何とか用を足して、そこで水分+カロリーを購入ですよ。チョコはもちろん、ヴィダーインゼリーやホットドリンクを多めにゲット。この先しばらくコンビニが無い可能性だってありますからね。

 暖房の効いた店内に未練はありますが、ここで長居するわけにはいきません。工業団地に入ってから、まだ半分の10kmも歩いてないんです。急がなくては……。

 ローソンを出ると、

 

 

 また、何も無い道が始まります。歩いても歩いても同じ風景。たまーに交差点があると思えば、左手が工場の入り口。そしてまた何も無い道。その繰り返し。

 これは精神的にかなり辛い。ひたすら穴を掘って、その穴を埋めさせられる囚人の話を聞いたことがあります。いまならその気持ちがわかる。単調で変化のない作業ほど辛いものはありません。

 その後、無人のガソリンスタンドの縁石に座って休憩したり、明かりがないからやむなく信号の下で休憩したり。とにかくこの暗闇から抜け出したい。人のいる世界へ戻りたい。

 歩みを進めるたびに、少しずつ、本当に少しずつですが、都会の香りがしてきました。街灯が1つだけあったり、

 

 数時間ぶりに歩行者用信号を見つけたり。ほんとうにちょっとずつ、明るい場所が増えていくんです。

 ふと橋の向こうを見ると、千葉市の夜景が見えてきました。まだまだ距離はありますが、目標があると楽になれるんですよ。コンビニを見かけるたびに水分補給しながら、前進前進。ちなみにサンクスはお店の入り口にベンチがあるので休みやすかったです。激寒ですが。

 

 そして、そろそろ日付が変わろうかという頃、ようやく工業団地ゾーンを脱出。

 

 

その11へ続く。