










それは春の、雨降り止まぬ午後の話。
あるお客さんが、マザーボードやグラフィックボード、サウンドカードやハードディスクやスキャナーなどをまとめて売りにきました。まあよくある話です。
この時点で誰がこれから起こる恐怖を予測し得ただろうか。
とりあえず一通りチェックするわけですよ。動作確認。スキャナーの箱をあけておもむろにパソコンに繋ごうとすると、なかに一枚の印刷された紙がはいっています。みると、
お客さん、エロゲー「ナチュラル」のマニュアルを使ってテストをしていたようです。
一瞬、魔法「ストップ」を掛けられたようにすべての店員が硬直しました。俺は「これは返さないほうがいい。それがやさしさってものだ」と主張したのですが受け入れられず、お客様に返しました。ナチュラルのテスト印刷。
お客さん、うろたえてました。
お客様が帰られたあと、ハードディスクをフォーマットしようと思ったんですよ。それで何の気なしに、本当に何の気なしに中身を確認したんですよ。それが恐怖への扉とはつゆしらず。
普通、パソコンやらハードディスクやらを売りにくる方は、その前に初期化やらフォーマットやらをしてきます。そりゃ見られたら恥ずかしいファイルとかあるでしょうから。皆さんのパソコンにもあるでしょ?見られたら切腹もののファイルとか。
そのハードディスク、初期化されていませんでした。データ丸残り。
ちらっと見たブックマーク。アニメ系掲示板がぎっしり。本当にあふれんばかりのアドレスの山。
背中に冷たい汗を感じてきました。ちょっと痛いです。
文章のフォルダもありました。「つれづれなるままに」というファイルを開くと、どうやら日記のようです。顔文字やら(笑)やら
テヘッ☆(爆)。
やらが満載。あんた36歳(買い取りの記録より)にもなって☆はないだろ。しかも日記の事柄すべてがパソコン関連。友達いないのか36歳。
このあたりで俺達店員の残りHPが全員一桁に。めまいを起こすもの、気分が悪くなってしゃがみ込む者も出現。俺もガゼルパンチをボディーにくらったかのように嘔吐寸前。
さらに「ジャスティス学園××(詳しい名前は忘れた)」というファイルが5〜6個あった。その第一章を見てみる。
新しく学校に赴任した(以下略)保険医の(以下略)「さあズボンを脱いで(以下略)
あの36歳エロ小説書いてやがる。自分で。第6章まで。
最初、どっかのホームページから落したのかと思ったんですが、作者がお客様の名前になっていました。
このトドメの攻撃で店員全員死亡。パーティ全滅。気分的には瀕死の状態で食らったメガンテ、のこり300点で振り込んだ国士無双の味によく似ていました。俺は地面に伏してしばらく動けませんでした。笑いすぎて。
察するに、この36歳はホームページを持っているのでしょうね。そうすれば日記とかはつじつまが合います。ていうかホームページ持っていてくれ。誰にも見られないエロ小説や顔文字爆発な日記を書いているなんて想像するだけで怖いです。
そのハードディスク、その日のうちにフォーマットされて店頭にならんでいますが、我々店員の間ではそれを「恥ずかしいハードディスク」と呼び合っています。
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