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―第7章―

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 「どうやら間に合ったみたいだね」

 ワタナベは4人を見渡して言った。驚き、怒りが入り混じった瞳が自分へ集まるのを感じながら。

 兄貴は驚きと苛立ちを隠せなかった。

 「ワタナベ、お前は警備長に監視されていたはずだ!どうやってここまで来れた!」

 「兄貴先生、御存知でしたか?警備長って耳たぶを舐めあげると、とてもイイ声で喘ぐんですよ…。あとスクール水着もお好きなようで…ふふ。」

 ワタナベは悪戯っぽい目で兄貴を見上げると、舌先をちろっと出した。

 (…堕とされたか…)

 苦虫を噛み潰したような顔の兄貴をよそに、ワタナベは机の上に並べられた書類を握り、引きちぎった。

 「あっ!」

 驚きの声をあげるヤマグチ。見せつけるようにワタナベは留学申請書を細かく破り、宙に放り投げた。千切れた紙吹雪がゆっくりと皆の足元へと降り積もる。

 「ヤマグチ、俺たちの仲はこんな紙きれじゃ引き裂けない。そうだろ?」

 二人が視線を交わすのを見て、兄貴は自分の中にある嫉妬の炎が燃えあがるのを感じ、思わず大声を出していた。

 「ワタナベ!貴様、謹慎中のくせにこんなところへノコノコと!しかも大切な書類を破り捨てるとは!もはや停学ではすまされんぞ!」

 「兄貴先生。いや兄貴さん。貴方はもはや我々に指図できる立場ではないんですよ」

 ワタナベは脇に抱えていた茶封筒から一枚の紙をとりだし、それを兄貴に見せながら言った。

 「午前中に行なわれた理事会で、貴方はテキスト学園体育教員の任を解かれました。『卒業生を含む複数生徒に性的関係を強要したこと』が主な理由です」

 「なっ…何ぃ!」

 「証拠集めは思ったより簡単でしたよ?兄貴さん…少々やりすぎましたね。本日中に学園内の私物の撤去、および学園からの退去をお願いします」

 「くっ…!」

 血が滲まんばかりに握られた拳をそのままに、兄貴はゆっくりと背をむけ理事長室から去っていく。その背中をワタナベは複雑な思いで見ていた。入学当時から憧れ、一度は自分から身を捧げた兄貴。その兄貴を自分の手で蹴落とすことになろうとは――。

 腕を組み、二人のやり取りを聞いていた学園理事長覇者りんが、ゆっくりと口を開いた。

 「…なるほど。話はわかった。だがワタナベ君、きみとヤマグチ君・三等兵君の不純同性交際はまぎれもない事実。三人にはそれなりのペナルティを課さねばならない」

 ワタナベはまっすぐに理事長を見つめた。

 「理事長、なぜ今日の理事会に貴方が呼ばれなかったか御存知ですか?実は兄貴の行為を『理事長が黙認していた』という疑惑もあるんです。兄貴の行為――例えば性的行為を撮影するために体育教官室に隠しカメラを設置する――などですね。

 ところで理事長。我々が不純同性行為をしたという証拠とは、どのようなものなのですか?」

 「それは―――――!」

 覇者りん理事長ははっと気がついた。不純同性行為の証拠とは、兄貴が体育教官室の隠しカメラで撮影したワタナベ達のダンスだ。だがそれを証拠として出すと、「体育教官室に隠しカメラがあった」ということを理事長自身が認めていることになる。つまり、兄貴の行為に少なからず関わっていることを自分で認めることになってしまう―――!

 「理事長……。」

 ワタナベは理事長の耳元に近づくと、そっと囁いた。

 「今回のことは、お互いに不問ということで…。」

 「…わかった。」

 理事長はにじみ出る脂汗を背中に感じた。不純同性行為の証拠を示せない以上、理事長に勝ち目はない。これ以上問題をややこしくすることで、兄貴と道連れになることだけは避けたかった。

 「ヤマグチ君、三等兵君。今回のことは不問とする。わざわざ済まなかったね。もう帰りたまえ。」

 「はっ…はい!」

 弾かれるように席を立つヤマグチと三等兵。その二人を満足そうに見た後、ワタナベは理事長に言い放った。

 「これからもテキスト学園の理事長として、我々の為に学園を運営されるよう、生徒会長としてお願いいたします。」

 「…わかった。」

 ヤマグチは笑いを堪えるのに必死だった。「生徒の為」ではなく「我々のため」に学園を運営しろとワタナベは言ったのだ。ワタナベは、学園に大きな発言権を持ったことをワザとアピールしたのだろう。最も理事長が言葉の真意に気づいたかどうかは分からないが。

 (…ワタナベが居る間は、テキスト学園は安泰だな。)

 

 

 ワタナベ達三人は、理事室を出た。外はすでに暗く、粉雪が舞っていた。

 

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