4.gif (787 バイト) 読書…小説・その他(13)4.gif (787 バイト)






ネバーランド

 年末、実家に帰らず寮に残る4人の男子高校生の物語。ミステリーでもなければ大きな感動も推理もなく、淡々と「青春」を見せ付けられます。

 なんかね、4人が他人に言いたくない秘密を共有していくんですけど、それによって本を読んでいる私も、この4人と友人になった気がしてくるんですよね。あー、こういうマセた奴いたなぁ、などと思い出してしまいます。

 ただね、実際の男子高校生はこんな綺麗なものじゃないですよ!男子寮つったら確実にエロアイテムまみれですよ!そういった意味で、「ネバーランド」ってのはなかなかいいタイトルだなぁ、と。

失はれる物語

 ファンいわく、乙一の作品は二種類あるそうです。「黒乙一」というグロくて後味の悪ーい作品群と、「白乙一」というちょっと切ない作品群。以前ご紹介した「GOTH」「ZOO」は黒乙一で、今回ご紹介する「失はれる物語」は白乙一に属するそうです。

 で、読んでみたんですが、GOTHなどと土台は同じなんですよ。「友達が誰もいない女子高生」とか「切断された指を保存する」とか、基本的にくらーいんですよ。

 なのに、読後感は悪くないんです。救われないまま終わる物語もあるのに、登場する人たちの優しさが、それ以上に強く印象に残ります。

夏のロケット

 かつて宇宙に憧れていた少年たちが、民間人でありながら火星への有人飛行を本気で目指します。例えそれが法律に反していたとしても……。

 かなり深いロケット技術が使われているのですが、それが素人にも分かるように書かれているのがいいですね。ロシアの技術者の「金をかければいいってもんじゃないんだ」という態度が妙に頼もしかったり。

 学生のころの青臭い夢を、大人になって実現しようとする気持ちってのが、痛いほどわかるんですよね。ロケットの形が次第に出来上がっていくにつれ、「頑張れ、頑張れ」って彼らを応援してしまいました。

ウォーレスの人魚

 2012年、セント・マリア島で人魚が発見されたことから始まる壮大なファンタジー。

 人間は一度海に戻ってから再び陸へと上がり進化した説、人魚がアンコウと同じ生殖行動を取るところなどが、上手に絡んでストーリーを形成しています。文庫本としてはかなり厚い本なのですが、気がついたら読破していました。最後はちょっとモヤっとしましたけどね!

暗いところで待ち合わせ

 視力を失くしたミチルの家に、警察から追われているアキヒロが身を隠す。ミチルに気付かれないよう息を潜めるアキヒロ、誰かがいることに気付いているものの、それを悟られないようにするミチル。奇妙な同棲生活が始まる……。

 全編を通じてミチルとアキヒロの緊張感が満ちており、読んでるこっちがハラハラしてしまうわけですよ。最後にはミステリー的なシメも用意されており、いい意味で読みやすい本です。

 しかし乙一氏ってのは、「感覚がなくなる世界」と「社会から疎外された人間」を書くのが上手いですねー。面白い本でした!

夏への扉

 SFですな!これはまさしくSFですよ!

 彼女に裏切られ、会社を乗っ取られ、失意に沈む主人公が猫ともに冷凍睡眠に入り……というお話。現在と未来の行き来がメインなのですが、その仕組みや伏線の張り方がうまーく出来てるんですよ!

 この本の初版が1957年でして、その当時の人たちが想像した2000年の様子が書かれており、これも興味深いんですが、過去の人に「ごめんね、未来の僕らはここまで頑張ってないんだ」って謝りたくもなったり。ともかくいい本でした!