1up
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日高屋の女性

日高屋には人生が詰まっている。

 

吉野家、松屋、すき家の客層に比べて、日高屋には人生色の濃い客が多いと思っている。

老若男女、人生の濃淡にかかわらず、日高屋はすべてを受け入れてくれる。

そして私は、幸せを噛みしめるために日高屋へ向かう。

 

日高屋のカウンターブースに座り、注文タッチパッドを小気味よく操作していく。

今日の食事はW餃子定食に生ビール。

W餃子定食は、餃子12個にご飯とスープ、さらに唐揚げorキムチがついて600円台。

これに生ビールをつけても1000円でおつりがくる。

1000円でカバーできる幸せが駅前にある。

私を勇気づける幸せである。

 

届いたW餃子定食をビールで流し込んでいると、横のブースに一人の若い女性が座った。

日高屋で、若い女性に遭遇するとは珍しい。だが女性が食事に来ることぐらいはあるだろう。

だって、日高屋はすべてを受け入れてくれるから。

 

女性はタッチパネルを操作し、すぐに届いた生ビールを飲み始めた。

なるほど。女性でも、日高屋でビールを飲みたい夜があるのだろう。

仕事のストレス、交友関係のわずらわしさ。抱えている重荷は男女を問わない。

ブースを区切る半透明のアクリルが我々を隔てているが、同じ日高友(ヒダカメイト)として我々は仲間だ。

貴女の重荷が、少しでも生ビールに溶けてくれるように……そう願いつつ、心の中でグラスを合わせる。

 

女性は、ゆっくりと長い時間、ビールを味わっている。

私はW餃子定食をすっかり平らげ、ビールを飲み干した。

それでも女性はビールだけを飲んでいる。

 

 

え、注文したのビールだけ????

 

衝撃で酔いが覚める。貴女、そんなストロングスタイルの注文したの??

いや、私も定食屋でビールを注文したことはあるが、食事、もしくはツマミと一緒だ。

ビール単品で、ビールのみで、注文したことなんてないぞ…?

急に背筋が伸びるのを感じる。日高友なんて言っていたがとんでもない。むしろ私の先輩ではないか。

先輩、失礼しました……!

あんたカッコいいよ……!この私がマネできないことをやってのけたよ……!

 

女性、しばらーくビールを飲み、ふと何かに気づき、タッチパネルを操作し始めた。

すると、その後、W餃子定食が届いた。ただの注文し忘れだったね。

 

日記

Posted by watanabe@logipara.com