「あなた、動画撮れるでしょ?」
放課後になって、夕暮れの中、教室からぼんやりと窓の外を見ていると、プールで人魚が泳いでいた。
そうか、そろそろ学園祭なのか。
これは謎なのだが、なぜか我が校では、人魚のコスプレをして泳ぐ動画を学園祭で発表する、という伝統がある。
下半身に魚の着包みを着けた女の子が、ゆらゆらと揺れながらプールで浮かんでいた。
あれは……誰だ?たしか隣のクラスの生徒だったような……。
私の横にいた悪友が、笑いながらヤジを飛ばす。
「ぜんぜん泳げてないぞー!!」
人魚の女の子も笑いながら言い返す。
「うるさいわね!こっちは大変なのよ!」
その人魚が私に気付き、
「ねえあなた、動画撮れるでしょ?ちょっと私を撮ってくれない?」
……っていう夢を見ました。
みなさん言いたいことは色々あるでしょう。しかし、夢から覚めた私がそら恐ろしくなったのは、「いつまで学生の頃の夢を見てるんだ?」ってことですよ。
だって私、45歳ですよ???学生のころなんて、30年前ですよ??
なのにいまだに、学園祭の夢や、単位を落として右往左往する夢を見てる。
高校生なんて3年、大学生なんて4年しかないのに、20年過ごしている社会人の夢は見ずに、学生の自分の夢を見る。
おそらく私は、学生の頃の鬱屈した青春について、ずっと果たせない想いを抱いているんでしょう。
これはね、呪いですよ。たちの悪い呪いですよ。
だって学生の青春なんて、もう絶対に取り戻せないんですから。
きっ私は、これからも、色あせた解けない呪いを抱いて、日々を生きていくのでしょう――――。
……っていう夢を見(略