細長いものをひたすら食べるだけの女性YouTuber。
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ウシュアイアを出港した、我らのペンギン饅頭号ことル・ボレアル号。
この期間の旅行日程表を見てみると、
二日間「終日クルージング」のみ。
ひたすら航行。まったく余白が眩しいぜ!
そして、南極へと向かうこの二日間こそ、悪名高き「ドレーク海峡」に挑む二日間でもあります。
ドレーク海峡。
そこは「世界で最も荒れる海」として有名な海峡。
海流は、地球の自転によって生まれています。一般的な海流は、大陸にぶつかることで勢いが弱まります。
しかし南極のまわりは大陸がないため、海流が弱まらない!それによりドレーク海峡が大荒れの海となるわけです。
そのあまりの荒れっぷりから、「吠える40度、狂う50度、叫ぶ60度」と称される南極の海。「よりもい」でも恐怖の対象として、なにより南極の洗礼として描かれていたことはご存知でしょう。そう、船酔い!ぎぼちわるいです!
キマリたちの乗っている砕氷船は、氷を砕きやすいように、船底が丸くなっています。だから、なおさら揺れやすい。南極観測隊の話だと、もっとも揺れたときで
「左に45度傾いて、そのあと右に45度傾く、を繰り返す」
んだそうです。スキーやスノボをやってる方なら分かりますよね。45度って壁だよ。
対して我々の乗っているクルーズ船の揺れは、そこまで酷くはない……と想定されます。砕氷船ほど船底も丸くはないし、揺れ防止のスタビライザーも装備していて、対策は施されている。
だけど、
それでも、
とんでもなく揺れるのがドレーク海峡。
この海峡の恐ろしさは、南極ツアーの説明会でも繰り返し、繰り返し言われてきました。
客:「ドレーク海峡は揺れる、って聞いたんですけど……」
添乗員「確かに揺れます。だけど、前回のツアーではね、みなさん『せっかくの食事がもったいない!』ってね、頑張っちゃって。7割ぐらいのお客さんは『気持ちわるいー』って言いながら、食事に来てましたよー(笑」
3割死んでるじゃねぇか。
すこぶる暗澹たる気持ちになるわ!普通、ツアー説明会って楽しいことばかり話すものじゃない?正直すぎない?まあ、とにかく揺れることはわかる!
そしてもっと怖いことに、どんなに気持ち悪くても、リタイアしたくても、逃げ場がない!船はどこでも揺れる!まわりは全部海!どんなに苦しくても気持ち悪くても、数日間揺れっぱなし!
もちろん我々とて、なんの準備もなくドレーク海峡に挑むつもりはありません。
まずは酔い止め薬!説明会では「アネロンが良い」と聞いたので同種のものを準備! ちゃんと往復分の数量を計算しようね!南極から帰ってこられなくなるよ!
……そして、キマリや報瀬たち女子高生には真似ができない、大人の我々だからできる、もう一つの対策。それは、
酒。
そう、作戦名「船に酔う前に酒に酔え作戦」であります!!前回の記事にもあったとおり、この船はアルコールが基本無料!ワインもビールもシャンパンも、24時間無料で飲める!供給量は充分!
しかもこの「船に酔う前に酒に酔え作戦」、世界の船乗り達にも広く知られている手法らしく。なんでも知人のロシア人船員が言ってたそうだから、間違いないね!ロシア人が酒で間違ったこと言うわけないもんね!
というわけで、致し方なく酔い止め薬を飲み、致し方なく酔い止め薬(酒)を飲み、万全の布陣で乗り込んだドレーク海峡!その結果は!!
……あれ?
……あれあれ??
すこぶる穏やかなんですけど
そう、ドレーク海峡は、「普通は荒れている」「ひどい時は超荒れてる」のであって、四六時中悪天候なわけではありません。わずかながら荒れていない、平穏な時もあるんです。
その、平穏なとき、
捕まえちゃったー。
こんな穏やかなことはほとんどなくて、実際、復路のドレーク海峡はこんな感じでした。
動画を見ていただければ分かるんですけど、船の上下がすごい。船が、うねるうねる。体が浮く浮く。
先日の某世界ふしぎ発見で、「この船でワイングラスが倒れたことがない」って紹介されてました。確かに倒れる感じじゃないんですけど、うねるんですわ!!ゆーっくり、大きく、揺れるんですわ!ボッシュートされる勢いなんですわ!
これが「普通」。
復路のドレーク海峡では、プロの添乗員ですら11人中7名が倒れたそうです。レストランに来る人、どんどん減っていった。ツアー客に人狼がいるの?ってぐらい毎回減ってた。
しかしながら、それに比べて往路の穏やかといったら!
まさに「強運」「日頃の行い」「神に愛されし存在」といったナイスワードしか浮かばない!いやーまいったなー!!「ドレーク海峡で悶えるワタナベさん」を想像していた読者の期待に沿えなかったなー!なんかごめんなー!!
しかし、油断は禁物です。よりもいの4人も、船酔いの薬を切らしたがために、ひどい船酔いに苦しんだのです。私だってそうなるかもしれません。しっかり薬を飲まなければ!「薬」をね!
ちなみにこのとき、月曜日の午前7時。
勝った!!!(何かに)
日本にいれば、月曜という憂鬱を抱えて、電車に揺られて出勤している時間帯です。今週の仕事を頭の中で組み立てながら、ため息まじりに次の週末を夢見ているころです。
しかしいま私は、クルーズ船で朝からフレンチを楽しみ、シャンパンを飲みながらフルーツをつまんで、穏やかな海を眺めている――。
(゚Д゚)勝った!!!!(何かに)
これを勝利と言わずに何が勝利か!私は間違いなく何かに勝ったのです!全日本サクセスランキングがあったら、あの瞬間だけは上位に食い込んでた。海軍本部に懸賞金かけられてた。ワンピースのOP主題歌、流れ始めてた。
そんなありったけの夢をかき集めたクルーズ船は、好天に恵まれすぎた結果、予定より早い速度で南極へと向かっていきました。
なお、ドレーク海峡は嵐がなかったその時、日本の嵐が大変なことになっていたと知ったのは後のことです。
そして船は順調に南へと進み、ついに、「南極」へと突入します――。
「普通に水着を着ているより、ものすごく分厚いアウターの下が水着、のほうが興奮すると思いません?」
「いいから今月の家賃を払え!!」